2015F1日本GP! 金曜フリー走行 part.1

 ホンダレーシングの歴史とはすなわち無謀な挑戦の歴史でした。ろくにレーシングマシンなんか作ったこともなく、そのうえ倒産寸前だった経営状態の中で突然マン島TTレースに出場すると宣言してみたり、自社で初めて作る四輪車(トラックとオープンクーペ)と同時にF1マシンを開発していたり、いいテストコースがなかったからという理由で自分たちで国際サーキットを造成したり、無謀を通り越して狂気の沙汰としか言いようのないことばかりやってきたのが、ホンダという会社です。
 しかし、その無謀と狂気を現実に変えていったという事実が、ホンダレーシングの凄味。マン島TTレースでは参戦3年目にして優勝、それも完全制覇と呼べる内容で制し、F1では参戦2年目の最終戦メキシコGPで初優勝。第二期ホンダF1では、マクラーレン・ホンダ体制の1988年に、16戦15勝という驚異的な勝率でシーズン制覇。そして鈴鹿サーキットは世界のトップドライバーたちが「真のドライバーズサーキット」と称賛を惜しまない、名コースのひとつとして名を馳せています。
 やるからには必ず勝利し、完全制覇するまで終わらない。それが栄光と名声をほしいままにした、ホンダレーシングというレース屋集団だった。

 しかし、何事もうまくいくことばかりではありません。敗北と挫折にまみれて活動を終了した、第三期ホンダF1の屈辱は記憶に新しい。B・A・Rホンダ〜ホンダワークスまでの9年の内わずか1勝しか出来ず、最後の2年は「惨敗」としか言いようのない成績のまま撤退。そのうえ、チームを売却した先のブラウンGP(のちのメルセデスAMG)が、2008年にホンダが最後の切り札として開発していたマシンを用いて、ドライバーズ・コンストラクターズを制覇。ファンも、そしておそらくはホンダ自身も、あれほど悔しい想いをしたことは他になかったことでしょう。
 国内レースにおいても、スーパーGT・スーパーフォーミュラ共に、トヨタや日産の後塵を拝し、「もうセナ・プロの時代じゃないんだから」とドライバーにまで言われる始末。インディカーや二輪レースでは相変わらず最強クラスのメーカーとして君臨しているものの、日本の四輪レース、特にF1ファンにとっては、「勝てなかった第三期ホンダF1」の印象はあまりに強すぎた。インディでどれだけ強くても、二輪でどれだけ最速でも、それだけでは気分は晴れない。
 いつかまた、鈴鹿サーキットにホンダF1が帰ってきて、あの時の借りを返してくれること。それが、「強かったホンダ」の時代にF1ファンになった者の、切なる願いだった。

 そして2013年5月。4年の沈黙を経て、ホンダがハイブリッド時代のF1に再び参戦するという宣言がなされ、2年後の2015年、ついに彼らが帰ってきた。80〜90年代のF1で最強の代名詞として君臨した、マクラーレン・ホンダの名を引っさげて。

 その後の展開は周知の通り。もちろん1年目から勝ちまくるなんてあるわけない。それどころか、PUの信頼性に深刻な問題を発生させて、完走することすらままならないレースが続く。勝てる相手といえば最弱の代名詞マノー・マルシャくらいなもので、ワールドチャンピオン経験者2人がガンガン抜かれていく様を、視聴者に提供し続けております。
 ついでに他のドライバーがアロンソやバトンについて「気の毒」などと同情する始末。これだけ勝てないといっそ清々しい。

 原因はいろいろありますが、おそらく最大の理由は、マクラーレンが提唱した「サイズ・ゼロ」という極端に空力に振ったデザイン。リアを絞りに絞ったデザインのせいでPUレイアウトの自由がほとんどなく、そのため冷却がまともにできないというものでしょう。
 このためERSの回生に問題を抱えて、本来なら一周を通して使えるはずの回生エネルギーが、周回中になくなってしまうという事態に陥る。ついでに熱害でPUや車体にダメージを与えるおまけつき。
 そのうえ、モータースポーツジャーナリストによると、マクラーレン側の要請で仕様変更を繰り返した結果、構造が複雑怪奇になりすぎて、MGU-Hの交換だけで10時間以上もかかるようになってしまっているという話。メルセデスなんかだと1時間程度で終わるらしいのに、その10倍ですよ、10倍。そりゃこんなメンテナンス性の悪いPUじゃ、まともにトラブルシューティングなんかできるわけない。
 回生に頼らなくてもいいハンガロリンクや市街地サーキットではそこそこ戦えるものの、パワーが必要なスパ・フランコルシャンやモンツァ・サーキットでは、もはや勝負になってないレベル。
 2015年はまさに「勉強の年」になってしまいました。

 そして迎えたF1日本GP。ようやく本題です(前振り長すぎ!)。今年も行ってきましたよ、ええ、もちろん。
 弱い?遅い? それがどうした。ホンダF1が帰ってきたその年に鈴鹿に行かないなんて、そんな選択肢あるわけない。強い時も弱い時も、変わらず応援できなくて何がファンか。
 今はまだいい、勝てなくてもいい、そこに走ってさえいれば、反撃のチャンスはいくらでもある。今年ダメなら来年、来年ダメならまた再来年、地を這い土を舐めても、最後に表彰台の一番上を取れれば、それが勝者。「できるか、できないか」じゃない、「やるか、やらないか」、それが王者の資質。

 さて、本題と言いながら数行過ぎても本題が始まらないのでさすがに本題に入ります。
 F1日本GPはだいたい10月か11月にやるのが恒例で、多くは体育の日に合わせて開催されますが、今年は少し早めの9月末。2007年富士スピードウェイ以来、史上2度目の9月の日本GPです。
 前年度の悪夢がまだ続いているかのように、金曜日は朝からあいにくの雨。現地観戦組にとって、金曜日の雨はある意味で予選・決勝の雨よりもつらいもの。理由はまた適切なタイミングで述べますが、ともかく断続的にフロントウィンドウを濡らす雨の雫をワイパーで飛ばしながら、朝8時過ぎくらいに鈴鹿に到着。今年はカメラマンエリア+クローク+駐車券付のチケットなので、初のマイカー移動です。
 駐車場についてもまだしとしとと降っている雨。天気予報では午後にかけてあがるという予報でしたし、なんとか止まないかなーと思って車の中で少し待機。9時前には小ぶりな霧雨になってきたので、ここでようやく行動開始。

メインゲート
FUJIFILM X-A1 + XC16-50mm F3.5-5.6 OIS
はい、「遂にこの日がやってきた!」その通り。

 開場して1時間くらい経過しているので、メインゲートの人出はまばらです。そもそも金曜の上に雨降ってますしね。
 ウェルカム広場もすでに客はサーキットの方に行ってしまった後で、コチラレーシングのレーシングカーが雨に濡れているのみです。


JAPAN RISING


 もちろん私も広場に用があるわけではないので、早々にサーキットに向かいます。まずは午前中のフリー走行1回目。しばらく時間はありますが、色々用事も片付けないといけないので、ちゃっちゃか移動。


サーキットへ向けて


 サーキット方面へ歩いて行くと、売店が立ち並んでいる辺りでさすがに人が多くなってきます。記念キャップやらカタログやら、まずはここで買って観戦に備えるという人も多いかも。チームウェアなんかはGPスクエアに入らないと数がないですが、鈴鹿オフィシャルのものならこの近辺で充分。


雨に濡れる花

 さて、いよいよGPスクエアに近づくと、遊園地モートピアのバットのアドベンチャービレッジというエリアを横切るのですが、その時ふと上を見てみると、遊園地アトラクションの高架の上に作業員の人が……。


フライングシップ点検中


 怖ぇー。命綱はつけてるみたいですけど、なんかひょいひょい歩いて行くし、見ているこっちが怖いです。モートピアの営業時間前なので点検を行っていても不思議ではないんですが、実際にこうやって点検しているのを見たのは初めてかも。周囲のお客さんも一様に「怖ぇー」とか言ってました。

 そしてモートピアからサーキットを繋ぐトンネルを抜ければ、いよいよF1日本GPの舞台です。このトンネルって単に周辺道路との兼ね合いで作られただけだと思うんですけど、結果的にはいい演出になってますよね。毎度、気分がアガります。


トンネルを抜ける

 GPスクエアに到着したら、まず真っ先にやることは、カメラマンエリアに入れるビブスをもらうこと。引換券を持って、専用のテントに向かいます。
 カメラマンエリアチケットにも色々ありますが、今回買ったのは全部のエリアに入れるチケット。本当は一つ下のグレードのが良かったんですけど、そっちは売り切れてたんですよね……。まぁ大は小を兼ねるということで。

 で、もらえたビブスがこちら。


カメラマンビブス
iPhone

 これですよ、これこれ! 毎年毎年「うらやましいなー」と思って見てたのが、遂に自分の手に!
 そもそもですね、数年前に一眼レフカメラを買って写真を始めたのって、F1を撮りたかったからなんですよね。別に写真が好きだったからではない。モータースポーツを記録するための手段として選択したのが一眼レフカメラだったというだけ(今ではすっかり写真にもハマっていますが)。
 そうして数年間、モタスポ写真の練習期間を過ごしてきましたが、ここにきてついに当初最大の目標にたどり着いたわけですよ。もちろん腕はまだまだアレですが、マクラーレン・ホンダ復活に合わせて、背伸び半分でカメラマンエリアにチャレンジ! 3日間、撮りに撮りまくってまいりました。

 というわけで、今回はここまで。次回からはしばらくF1日本GPの写真を中心に書いていきます。

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