グランツーリスモ5プレイレビュー

 何度も何度も発売延期を繰り返し、E3の常連と化し、口の悪いゲハ厨からはGT先輩と呼ばれて呆れられながらも、なんとか発売まで漕ぎ着けたグランツーリスモ5。買ってきて現在遊んでます。
 レースゲームならぬオンラインカーライフシミュレータというジャンルだそうですが、お前はテストドライブ・アンリミテッドかというツッコミはきっと無粋なんだろうな(http://testdriveunlimited.jp/)。

 ま、ともかく、せっかく買ってきて遊んでいるので、ゲームプレイした感想に移ろう。以下、かなりの長文レビュー。





まずはインタフェースですが、親切とは言い難い設計。どこに何のメニューがあるのかぱっと見で分かりづらく、各画面でやりたいことをいちいち探すハメになる。慣れれば「どこになにがあるか」くらいは覚えますが、メニューが画面全体に散らばっているため、今現在のカーソルの位置から、選びたいメニューがやたら遠いということがしばしば。もう完全に見た目のゴージャスさが優先で、設計がプレイヤーに向いているとはちょっと言えない。プレイヤーが過ごすほとんどの時間はコース上やチューニング画面なのだから、インタフェースはシンプルにまとめて欲しかった。
 加えて、頻繁にオンラインにデータをロードしに行くため、画面遷移のレスポンスが極めて悪い。これは公式サイトに書いてある事ですが、以下にちょっと引用します。

『GT5』はオンライン対戦やコミュニティ機能のご利用の際だけでなく、ゲームの起動やGTモード内の画面表示などでも随時オンラインにアクセスする仕組みとなっているため、オンラインの混雑が通常のオフラインのゲームプレイにも影響を及ぼす状況が発生しております。
http://www.gran-turismo.com/jp/news/d11128.html

 デザインした人間を小一時間問い詰めたい。やっていることは、メニュー画面上に車関係のニュースを流すとか、公式のリリースを流すとかのようですが、はっきり言って邪魔。このためだけに、何度も何度も通過する画面の遷移がいちいち少しずつ遅くなっているわけで、イライラする事この上ない。ユーザーにとって重要な事は何か、もうちょっと考えてもらいたい。
 また、オプション設定の場所も、もっと親切に配置できたはず。例えば、キーアサインの設定画面がトップ画面とマイホーム上のオプションからしか遷移できませんが、レース前の簡易設定画面でもできた方が良かった。
 もっとも、これについては、先ほど言及した画面遷移にかかる頻繁なロードさえなければ、問題にはならなかった。あれがあるから、レース中に「キーアサインを変更したい」と思っても、トップ画面に戻るのが億劫で、結局我慢してそのまま続けてしまうこともしばしば。
 こういう細かいところは、じわじわとストレスになるので、詰めて欲しかったですね、もっと。
 お次は収録車種について。
 レースゲームの中でも、レースシミュレータに属する本作。実在の車が多数収録されてますが、その内容には2系統あり、内装やドライバーズビューが実装されている「プレミアム」と、それらのない「スタンダード」に分かれます。また、プレミアムはドレスアップもでき、基本モデリングもスタンダードより高精細。
 ということは、自分の好きな車、メインにしたい車は、プレミアムに属するものであって欲しいと思うのは必然。
 じゃあ、自分好みの車はどうだろうな~、と、まず調べてみることに。その結果、収録車種の中でどうしても乗りたい車が40台あるんですが、その内約半数がスタンダードしか無いという悲劇に直面。
 ちなみに以下が、乗りたい車の一覧。……なんかホンダばっかりだな。こうして改めてみると、すっかりホンダ党。

■スタンダードしかないもの
アウトビアンキ A112 アバルト '79
オートバックス ガライヤ '02
ブガッティ ヴェイロン 16.4 '09
DMC デロリアン S2 '04
童夢 童夢-零 コンセプト '78
フィアット パンダ スーパー i.e. '90
ホンダ ビート '91
ホンダ シビック TYPE R (EP) '04
ホンダ HSC ”第37回東京モーターショー コンセプトカー” '03
ホンダ インテグラ TYPE R (DC2) '98
ホンダ N360 '67
ホンダ NSX Type R '92
ホンダ S600 '64
ホンダ S800 '66
ホンダ S2000 Type V '00
ホンダ トゥデイ G '85
ホンダ Z ACT '70
ランボルギーニ カウンタック 25th アニバーサリー '88
マツダ コスモスポーツ (L10A) '67
ミニ クーパー 1.3i '98
日産 フェアレディ 2000 (SR311) '68
日産 スカイライン 2000GT-R (KPGC110) '73
スズキ アルトワークス スズキスポーツ リミテッド '97
トミーカイラ ZZ-S '00
トヨタ 2000GT '67

■プレミアムがあるもの
ダイハツ コペン アクティブトップ '02
フィアット 500 F '68
フェラーリ F2007
ホンダ シビック TYPE R (EK) '97
ホンダ インテグラ TYPE R (DC5) '04
ホンダ NSX Type R '02
ランボルギーニ ガヤルド LP 560-4 '08
ランボルギーニ ミウラ P400 ベルトーネ プロトタイプ CN.0706 '67
ランボルギーニ ムルシエラゴ LP 640 '09
ロータス エリーゼ '96
マツダ オートザム AZ-1 '92
マツダ アンフィニ RX-7 タイプR (FD) '91
マツダ ユーノスロードスター (NA スペシャルパッケージ) '89
マクラーレン F1 '94
マクラーレン MP4-12C '10
シェルビー コブラ 427 '66
スズキ カプチーノ (EA11R) '91
※:この他全ての収録車種の一覧は、以下の公式サイトに記載があります。

  http://www.gran-turismo.com/local/jp/data1/products/gt5/carlist_jp.html


 私の好みはマイナーだとでも言うんかコラァ。ASLガライヤとトミーカイラZZと童夢 零とHSC以外は、メジャーどころばかり(のはず)なのに!
 まぁさぁ、S600とかダットサン時代のフェアレディとかはしゃーないと思いますよ。いくら有名所でも、今さらこれを好んで乗り回したいと思うのは少数派だろうことはわかる。でも、トヨタ2000GTくらいプレミアムでも良くないですかね。
 それに、ホンダ・ビートの立ち位置が悲しすぎる気がするんです。ライバルのAZ-1もカプチーノもプレミアムがあるのに、こいつだけスタンダードオンリーって……(´Д⊂グスン。
 なお、ホンダ・S2000は、'06モデルのみプレミアムが用意されてます。でもこれじゃダメなんよ。だって、2005年のマイナーチェンジで、自慢だった9000回転ブン回るエンジンが、8000回転に落とされちゃったんだから。ボアアップで低回転域のトルクが太くなって、使いやすく・速くなったのは確かだけど、それはS2000の世界観とは違うと思うです。
 さて、続いてはマシンと背景に関するグラフィック面。これについては、良いところと悪いところが同居してます。
 まず悪いところは、スタンダードカーの出来があまり良くないところ。プレミアムカーと比べると、ぱっと見で既にレベルが落ちていて、このせいでやや気が萎える。さすがに走行中には気になりませんが、フォトモードやガレージ表示などでは、格差社会の縮図かと言うほど違う。
 例えば、プレミアムカーは車体の継ぎ目までポリゴンで再現されているのに対し、スタンダードカーは継ぎ目のテクスチャが貼ってあるだけ(ぱっと見てわかるレベル)。タイヤハウスの半円も、プレミアムカーはなめらかな曲線を描いているのに対し、スタンダードカーはカクカク。
 加えて、フォトモードでは近距離撮影できないし、ドライバーズビューもない。出来る事からして既に差が付けられているというのは、さすがにどうかと思う。スタンダードカーにこそ自分の好きな車があるというユーザーには相当がっかりな仕様。
 で、次に良いところですが、背景の色づかいとプレミアムカーの出来映えはとてもハイクオリティ。背景オブジェクトはコースによって描き込んでいるものとあっさりしたものがあるけれど、色づかいがリアルなため、現実の風景の中を走っているような気になる。オブジェクトその物の造形もしっかりしていて、鈴鹿サーキットの観覧車なんかもちゃんと動いてます。
 プレミアムカーはGT5のために一からグラフィックモデルを作ったようで、造形の再現性、色合いのリアルさ共に最高水準。内装もしっかり作り込んでいるので、ドライバーズビューでは各マシンごとに違った雰囲気を味わえて、それだけでもワクワクします。
 加えて、フォトモードの美しさは特筆すべきもので、かっこいい場面を切り取る作業はさすがグランツーリスモという楽しさ。この方面では、現在でもトップを走っていると言って良い。さすが、だてに6年も費やしていないという出来映え。返すがえすも、スタンダードカーの存在が悔やまれるところ。
 同じくグラフィック面として、フレームレートについて。
 基本的には60fpsで動作します。が、全ての場面で60fpsが保障されているわけではなく、車が混雑する場面では30~40fpsくらいまで落ちる。
 だいたい晴天時は10台以上、雨天時は2台以上、ユーザーが見ている画面に表示されている時に、フレームレート落ちが発生。視界からマシンの数が減ると、60fpsに復帰します。オンラインだとさらに少ない台数で発生します。
 まぁゲーム性には特に影響がないので、気にしなければ問題はない。とはいえ、普段は60fpsで動作しているので、そこから落ちると、本来はたいしたことではないはずなのに「ん?」と感じる事は確か。クラッシュ時などはともかく、正常に走っている場面くらいは、なんとか頑張って欲しかったところ。
 グラフィックに関連して、各種の演出について。
 まぁこういったゲームなので、マシンを"魅せる"ことについていろいろ腐心してます。代表的なところとしては、次の通り。
 1.トップ画面で、ガレージに収録されているマイカーが壁紙(?)になっている
 2.新しい車を入手すると、暗闇から車がヌッと現れる演出が入る
 3.ガレージで車に関するデータやデモを見ることができる
 4.リプレイ時のフォトモードで、様々な角度から車の写真が撮れる
 4については後述。1もまぁ正直どうでもいい点なので飛ばすことにして、2と3について。
 まず2についてですが、最初に見る時はとてもカッコイイ。わお、クール、みたいな。
 しかし、ゲームを進めて何度も見ている内に、段々飽きてくる。飽きるだけならいいですが、演出に入る際のロードが絶妙にイラつく長さなので、いっぺんに何台も入手した際は、3台目くらいでちょっと苦痛になってくる。全部無くせは言わないですが、何台も入手した時は、パソコンのメールソフトによくある「全て既読にする」みたいなボタンがあっても良かったんじゃないかと。
 次に3の「ガレージにおけるマシンの情報やデモ」ですが、これはとても良くできています。特に、各マシンの「デモ」を選択すると、マシンが走行している映像と共に、その車に関する歴史などをナレーションで語ってくれるのが最高(ナレーションの文章自体はテキストでも読めますが)。これについてはプレミアムカーもスタンダードカーも分け隔てなく用意されるので、思う存分好きなマシンを愛でられる。素晴らしい仕事、とても価値があるものです。このためだけにグランツーリスモ5を買う価値があるといっても過言ではない。カーマニアが喜ぶフィーチャーです。
 次に、走行時の挙動について。
 これは、前作(?)グランツーリスモ5プロローグから大幅に進化したと思う。スポーツ走行時の挙動は手堅く再現されており、止まるにしろ曲がるにしろ、セオリーを踏襲しないと思うように動かない。
 逆に言えば、各車の性格を把握して、それに見合った操作をすれば、マシンはきっちりと要求に応えてくれる。
 厳しい事を言うと、ややピーキーさが目立っており、「こんなに偏屈な性能じゃないはずなんだけどな?」と思う場面もいくつかある。逆に、雨天時やスノーコースなどでは、「こんなにグリップするはずないんだけどな?」というくらい楽にコーナーを攻める事が出来たりする。
 全体としては完全にシミュレータというわけではなく、ゲーム的な味付けをしているところも目立つ実装。
 とはいえ、先ほども書いた通り、前作からの進化は大きく、様々な性格を持つマシンとの付き合いは、プレイヤーに楽しみをもたらしてくれるものです。自分のドライブと相性の良い車を見つけてコースを走っていると、まさに人車一体の気分。気持ちの良いドライブが楽しめると思う。
 なお、クラッシュ時の挙動については、甘めに設定してあるようです。実際にこの勢いで他車にぶつかったらスピンするな、という場面でも、普通に走行しているし、壁にガツンと脇をぶつけても、たいしてロスもせずに復帰する事もしばしば。さすがに、5プロローグのような、他車を壁代わりにしてコーナリングした方が有利だ、と言うようなぶっ飛んだものではないけれど、接触に関するペナルティは総じて低いです。
 ただこれは、GT5があくまでもコンシューマゲームであると考えるなら、欠点ではないと思う。いかにシミュレータ指向とはいえ、そこまでリアルにするのは、ただ人を選ぶ作品になるだけでメリットがあまりない。これはこの設定で良いと思う。
 続いて、操作系について言及します。
 パッド操作との相性はあまり良くない。これはグランツーリスモ自体の問題と言うより、PSパッドその物の弱点と言えるものだけれど、アナログL・Rトリガーの稼働範囲が狭いため、微妙なスロットルワークやブレーキングがとてもしづらい。しづらいというより、ほとんど不可能。このため、常にアクセル全開、フルブレーキングという運転になりがち。
 前述の通り、セオリーを踏んだ運転をしないとマシンが応えてくれないため、これはかなりキツイ。のんびり遊ぶ分には妥協できますが、シビアなタイムを要求されるライセンスモードなどでは、かなり大きなハンデを背負わせられる。
 こういった件については、ソフト側で調整する事も可能ではあるはずですが、GT5は無調整で入力を受け付けてますね。この辺り、コンフィグで設定できるようにしてもらった方が良かったかなとは思いますが、まぁ仕方ないと言えば仕方ないかも。
 上記の事から、遊ぶ際はステアリングコントローラ推奨。今のところ自宅には導入してませんが(Xbox360用と二つもあると邪魔なので……)、余裕がある方は購入を検討した方が良いです。
 お次は、天候変化に関することを。
 天候については、晴・雨・雪に加えて、曇り空も。レース前の設定如何により、これらが走行中に変化していきます。また、雨や雪が挙動に与える影響の度合いも「弱」か「リアル」で設定可能。腕に合わせて楽しめます。
 難易度的には、そんなに難しくなるという事もなく、気軽に遊べるくらいの変化。スノーコンディションより、ダートコースの方がグリップレベル的にキツイんじゃないかという感じ。設定を「リアル」にしても、雨の鈴鹿をかなり攻められます。接触してもほとんどの場合はスピンしないし。……アクセルオンでホイールスピンは頻発するけれど。
 まぁ、そこら辺の挙動をあんまり難しくしてもユーザーがついていけないので、このくらいの味付けの方が楽しいんじゃないですかね。
 天候変化のグラフィックについては、もうちょっと頑張れたかも。雨天時の背景は、全体にグレーを置いただけみたいな感じで、「雨に煙っている感」があまりないし、マシンが巻き上げる水しぶきも、ちょっとリアルとは言えない。
 プレミアムカーの車内視点で、雨や雪の際にワイパーが動くのは芸が細かくて良いんですけどね。水滴の描写がチープなのはご愛敬。
 天候については、頑張っているところと、もうちょっと頑張って欲しいところが半々ですかね。
 ここからは、各種のモードについて。
 ゲームには大きく分けて、「GTライフ」「アーケードモード」「コースメーカー」「グランツーリスモTV」があります。
 「アーケードモード」は、好きなマシンで好きなコースを好きな設定で遊べるモード。一般的なモードなので、これは特に書く事なし。
 「コースメーカー」はその名の通りコースを自分で作成できるモード。グランツーリスモシリーズのライバルと言える「Forzaシリーズ」が、マシンに様々なお絵描きを出来るシステムを搭載していましたが、GT5はマシンではなくコースエディットで勝負してきたという事ですかね。それぞれに住み分けできて良いと思う。
 「グランツーリスモTV」は、いろいろなムービーを見られるモードですね。無料のムービーと有料のムービーがあるようです。これは、存在理由がイマイチ不明。こんなムービーくらい、PSストアでDLさせればいいんじゃないかと素朴な疑問が拭えない。
 そして、残る「GTライフ」ですが、これが本作のメインのモード。GTライフの配下には、さらに次のようなメニューがあります。
 ・A-Specイベント
 ・B-Specイベント
 ・ライセンス
 ・カーディーラー/中古車ディーラー
 ・GTオート
 ・スペシャルイベント
 ・プラクティス
 ・オープンロビー
 ・フォトトラベル
 ・チューニングパーツショップ
 ・リプレイシアター
 全部解説しているとキリがないので、いくつかに絞って言及。
 A-Specイベントは、いうなればキャリアモード。自分がドライバーとなって、各種レースをこなしながらレベルアップするというもの。イベントは初心者向けから始まって、段々と難しくなっていく作り。レースの数も豊富なようで、長く楽しめると思う。
 B-Specイベントは、これとは逆に、自分が監督となってドライバーに指示を送り、レースを勝ち抜いていくモード。あまり類例のないモードで、GT5の特徴的なモードと言えます。
 ライセンスは、各種のお題をクリアしていく試験みたいなもの。各イベントは、クリアにかかるタイムや順位によって「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」の認定があり、この区分けが絶妙で良い。ブロンズは丁寧に運転すれば誰にでも取れるレベル、シルバーはちょっと慣れた人なら少し頑張れば取れるレベル。ゴールドは相当頑張らないと上級者でも歯ごたえがあるレベルというように、レベルデザインがとてもしっかりしてて好感が持てます。売りのひとつと言っても良いかも。
 リプレイシアターは、各レースモード(ライセンス含む)で記録した走行リプレイを見られるモード。リプレイ鑑賞中は好きなところでポーズでき、場面を切り取るためのフォトモードに移行できます。このフォトモードがグランツーリスモの醍醐味という向きも多く、かなりハイクオリティな写真を撮る事が出来ます。各エフェクトも充実していて、ずっとこればかりやっている人も多いのでは。
 ただリプレイモードでも、スタンダードカーの悲劇は健在です。近距離での撮影をされると都合が悪いらしく、近づいて撮影しようとすると「もっと離れてください」と表示が出て撮影できない。プレミアムではどんだけ近づいても撮影できるのに。ガッカリ感どころの騒ぎではなく、もう何かの嫌がらせかと言いたい。
 そして、おそらく最も独自性溢れるのが、GTオート。このモードでは、洗車だとかオイル交換だとか、何やら生活臭漂うメニューが並んでます。これはGT4から用意されている機能ですが、今作にも盛り込んである。
 このゲームは、GTライフにおいて使用した車の「劣化」を再現していて、レースなどの走行状況により、性能に影響があるという凝った仕様になってます。このため、同じ車を継続的に使う場合、定期的に洗車やオイル交換、あるいはエンジンのオーバーホールといったことをする必要がある。このゲームが「カーライフシミュレータ」と自称する所以と言える。
 これらに関連する箇所についてはとても作り込んでいる印象で、その仕事には惜しみなく拍手を送りたい。……が、正直なところ、レース中心のゲームでそこまで凝る必要はなかったんじゃないかとも思う。
 たかが車体カラーの塗り替えくらいタダでやらせてほしいし、ゲームの中でまでエンジンやオイルの状況を気にしたり、車体の汚れを気にするのもちょっとなぁ。何やるにもお金かかりますし(ゲーム内の単価としては安いですが……)。
 洗車やオイル交換システムに手間暇をかけるくらいなら、例えばホイール交換を全車種で出来るようにするとか(スタンダードカーはホイール交換不可)、エアロパーツをもっと充実させるとか、他にやれる事、プレイヤーが嬉しくなれる事が沢山あったと思う。そういうことを削ってまで、ゲーム内マネーでオイル交換やオーバーホールに金をかけさせることに、果たしてどれだけの意味があるのだろう。
 例えば、同じ"カーライフシミュレータ"を自称する「テストドライブ・アンリミテッド」は、GT5に比べてやれる事の数はとても少ない。壁にぶつかろうと破損するわけでなし、タイヤも摩耗しなければ、挙動がリアルなわけでもない。洗車するまでもなく、いつも車はピカピカ。リアルからは程遠い。
 けれど、それでも、どちらがより「カーライフ」か? と問われれば、間違いなくテストドライブの方だと私は思う。
 ユーザーが夢見るカーライフというのは、たぶん、日常の煩わしさをゲーム内で味わう事ではない。そういう雑事から解放されて、めいっぱい楽しい事を作中世界で追求できる事ではないのかな。
 あるいはもういっそ、やるならとことんまで煮詰めた方が潔かったかもしれない。たとえば、オイル交換の品種を選べて、カストロール・マグナテックの10W-40を使うかモービル1・レースプロバンの0W-40を使うかで、性能曲線が超微妙に変化するとかね。加えて、エンジンオイルとギヤオイルの区別があり、それぞれに管理しなければいけないとか。エアクリーナのメンテやタイミングベルトの交換、エレメントの交換など、そこまで突き詰めれば「シミュレーションゲーム」として面白いかもしれない。
 少なくとも、今実装されている「ただオイル交換という項目があるだけ」では、たいした愉悦は何もないわけだから。
 なんというか、ポリフォニーデジタルは、カーライフのリアルを中途半端に追求しすぎて、ユーザーが本当に楽しめる遊びを見失っていると思う。まぁ、こういうことをしているゲームはGT5くらいなので、その方向で独自性を追求するのも、それはそれでアリなのかも知れませんが……。
 さて、かなり長く書いているので、そろそろ一段落付けます。
 結論としては、「それなりに良くできている箇所もあるが、アラも目立つ」というところ。点数を付けるなら、まぁ75~80点くらいの出来。全然ダメというのでもないですが、物凄い傑作と言うほどでもないレベルです。
 なぜもっとハイクオリティにならなかったかと言えば答えは明白で、様々な方向に風呂敷を広げすぎだから。
 日本的なおもてなし発想というか、あれもやろうこれもやろう、ああいうこともやりたいこういうのもいいな、という感じで何でもかんでも実装した結果、各要素が中途半端な出来になっている。「削る」ということをまったくしていない。
 創作というものは「何を削るか」で最後の出来が決まるというのが常識ですが、グランツーリスモ5はこの点が致命的に欠けている。
 先にも書いたけれど、例えばGTオートだのグランツーリスモTVだの、ああいうどうでもいいところはすっぱり切って、他の所にリソースを回せば良かった。さっき絶賛したガレージの「デモ」についても、ゲーム部分のクオリティアップのために削っても良かった。
 そうすれば、文中で散々言及したプレミアムカーとスタンダードカーの差別化はなくなっていたかもしれない。そう思うとあまりに哀しい。
 この問題は作中の全てに影を落としていて、言い始めるとキリがない。モデリングやドライバーズビューの有無もそうですし、マシンを購入する際のディーラー区別についても酷い。だって、プレミアムは「カーディーラー」で買うのに、スタンダードは「中古車ディーラー」ですよ。なに、中古車なの? 新車買わせてくださいよ。どうしてそんなところで変な差を付けるのか。
 加えて、この中古車屋は常に全ラインナップを揃えているのではなく、頻繁に在庫状況が変化する。だから、「これ買おう!」と思って頑張ってお金を貯めても、いざ中古車屋に出向くと在庫がなかったりする。そんなところ凝らなくても良いじゃないかと激しく突っ込みたい。
 要するに、制作サイドの「スタンダードカーは出来が良くないからなるべく乗らないでね」という下心が見え見えなんですね。
 どうでもいい箇所に開発リソースを取られた挙げ句、グランツーリスモが最も高く評価を受けていたはずの、マシンモデリングがおろそかになっている。それならもういっそ収録しなきゃ良いのに、おそらく「全○○種の車を収録!」という、その数に見栄を張りたかったがために無理矢理収録。ああ悲劇。
 そういう卑しいところを隠さずに、メニュー画面やムービーの見栄えばかり気にしているのは、滑稽というしかない。いつかリリースされるであろうグランツーリスモ6に向けて、制作サイドには猛省してもらいたいところ。
 ま、ゲームとしては及第点の出来なので、トロフィーを集めながら気楽にプレイしつつ、また数年後の次回作に期待、ですね。


2010年11月28日

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