PS3が示すもの
「AQUAPLUS 日めくりCD vol.2 ToHeart2編 1~3月」、これの1月11日分のトラックにようやくるーこが登場!
いや、そういうことよりなによりだな、るーこ→愛佳の呼称が「うーんちょ」だったのが(笑。
この呼び名、たしか結城心一がアンソロで使ったのが最初でしたっけ? まさか公式で採用される日が来るとは!
アクアプラス、懐が深すぎる(笑。
さて、それはそれとして。
最近気になるのが、PS3関連のニュース。
まずはこちら。
寝耳に水。まさかSONYがPS2を切ってくるとは夢にも思わなかった。新ハードにおける上位互換が極めて強い武器であることを、SONYは誰よりも知っているはずなのに。
とりあえず公式コメントでは下記のような理由らしいですが……
>PS3向けソフトのラインアップが充実してきたため
うっそだぁ。たいして充実してないじゃない。
確かに総本数は100本近くあるから、ぱっと見ではそれなりに本数があるように見えますけど、内実はアクションとスポーツに異様に偏ったラインナップ。RPGの数も少ないし、パズルゲームなんか1本もない。これで充実しているとか言われても困る。
単にソフトの充実度を考えたら、Xbox360を遥かに下回ってます。一年の差を考えても、PS3のラインナップは弱い。
これを「充実しています」なんて、ちゃんちゃらおかしい。もう明らかにSONYは何か焦ってます。
で、焦ってる原因を考えると「ハードの売り上げ」以外には考えられない。そして「ハードの売り上げが伸びない」事の最大の原因は、普通に考えれば以下の2点に絞られるはず。すなわち――
1.ハードの価格が高い
2.遊びたいソフトがない
1は、現状では対処のしようがない。11月の値下げでも5000円しか安くできなかったし、そもそも最初から赤字売りなんだから。
そうなると、なんとか2の要因を解決したいところですが、先に言及した通り、ソフトラインナップもなかなか充実の気配を見せない。
それどころか、まだまだPS2のソフトがたくさん出る。というか、PS2で出した方がどうやら売れている。
無理もないです。だって、PS2の方がシェアが圧倒的に広いんだから。そして、ほとんどのゲームはPS2のスペックで実現できてしまうんだから。
この現状で、サードパーティに「PS3の開発ラインを増やせ」と迫っても、そりゃ首を縦に振らないでしょう。
そうなると、もう強引にでもPS2の命脈を絶ってしまう必要がある。それがPS2互換を省いた理由ではないでしょうか。
すなわち「互換もなくなって将来性のないPS2でぐずぐずしているよりも、将来性のあるPS3をみんなで盛り上げた方が良いよ」と。
そうでもしなければ、いつまで経ってもサードパーティがPS3に移行してくれない――そう考えたのでしょう。そんな状況になったと言うことが、そもそも悲劇なんですが。
まぁ一応
>PS2互換を求めるユーザーの声が多ければ、互換モデルを復活させることもあり得る
という公式コメントもあるにはあるようですが、どうだろうなぁ……。私には、PS2互換を求めるユーザーの声が多くなればなるほど、SONYは躍起になってPS2を潰しにかかるような気がしてならない(自社製品を「潰す」というのもおかしな話ですが……)。
しかし、ユーザーからするとたまらない。PS2のソフトをやるためだけに、ハードを1台出しておかなければいけないんだから。やりたくなる度に箱から出して接続するなんて事は、冗談でもしたくないし。
ましてや、持っているPS2が壊れてしまったら、PS2のゲームはもうプレイできない。メーカーが修理に必要なパーツを保持する期間はだいたい6年と言われていますから、当該ロットの最後の出荷から6年以上経過した後に壊れたら、修理は無理。
どれだけ過去の名作をプレイしたいと願っても、壊れたらハイそれまでよ、です。これはユーザーにとっては怖い……。
まぁ、今よりもっとハードの性能が上がったら、完全ソフトウェアエミュレーションによる低コストなPS2互換が可能になるかも知れませんけども。しかし、何年後だろうか……。
次にこちら。
話としてはこちらの方が遥かに重要。
まず最初に目に付くのは、関係者の声として紹介されている次の一文。
>ガンダム無双の売上本数は30万本程度と、思っていたほど伸びなかった
30万本と言えば、普通に良い売り上げです。爆発的な売り上げとは行きませんが、堅いタイトルの売り上げとして恥ずかしくない。
しかし「伸びなかった」と言う。要は「この本数では赤」だということでしょうが、しかし、30万本も売ってまだ赤字が出るなど、いったい制作費の回収にはどれだけの売り上げが必要だったのでしょうか。
というか、PS3のソフト制作には、いったいどれだけの費用がかかるというのでしょう。「ガンダム無双」のデモなどを見る限り、例えばPS3やXbox360の「三国無双」「戦国無双」と、さして変わらないことをやっているように見える。せいぜい武将がガンダムに置き換わったという程度で(多少、要素のプラスマイナスはあったにせよ)、むしろコストは安くできそうな勢いです。
あるいは、武将→ガンダムのグラフィック置き換えにひたすらコストがかかったと言うことでしょうか。しかし、仮に「グラフィックレベルが『無双』くらいの物を作った場合、回収に100万本は絶対に必要だ」という話になると、うかつに新規タイトルに手が出せません。新規タイトルでミリオンヒットなんて、なかなかないですし。
まぁどこにコストがかかったかは制作側にしか判りませんけれども、30万本で赤字が出るようだと中小メーカーはかなり苦しい。というか、よほど資金が潤沢&ユーザーが無条件に欲しがるようなシリーズタイトルを持っているメーカーでないと、PS3に参入できません。チャレンジ精神だけで参入したら、数十億単位の負債が発生しそうです。
ただ、バンダイナムコゲームスに言わせると、事情が違う?
>「売り上げ状況による経営判断ではありません。>あくまでもこの商品に関してそうしたニーズが高く、今回の発売に至りました。>感覚としては、PS向けに出したソフトをPSPに移植するのと近いものがあります」>(同社広報担当者)。
ふんふん。これが正しいとすると、赤字が出たわけではなく「ニーズが高かったので」という理由だと。
しかし、これだと逆にマズいことになる。
だって「ほしいソフトがあっても買わない」わけですから。もっと言えば「ソフトウェアでハードを牽引できていない」ということ。
かつて、FCからSFCへの移行は「F-ZERO」「スーパーマリオワールド」が引っ張った。SFCからPSに乗り換えが進んだ時は、「リッジレーサー」や「ファイナルファンタジー7」だった。PSからPS2であれば「ファイナルファンタジーX」「グランツーリスモ3」だったと思う。
これらは当時の新ハードでしか体現できない要素を多分に含んでいました。グラフィックだけではなく、そもそも似たものを再現することすら出来なかったはず。F-ZEROにしても、FF7にしてもそう。
こういったソフトたちが、既存のゲーム機にはなかった「新しいゲームの世界」をユーザーに見せつけ、ハードを買うに至らせたわけです(いわゆるキラーソフト)。唯一、PS→PS2については、遊びの幅はそれほど広がってはいなかったけれど、遊びの幅を吹き飛ばすほどの「絵の向上による感動」があったため、ユーザーは動いた(PS2も円熟期になると、PSの頃とは比較にならないほど遊びの幅が広がりましたけども)。
いずれにせよ、新しい「凄み」を見せてくれるソフトは「そのハードを買わないと遊べない」し、「だからそのハードを買う」という図式が成立していたし、そうでないと新ハードは立ち行かない。
その図式が崩れたら、新しいハードなんか売れっこないです。
しかし、PS2→PS3にはそれがない。……というのが、ユーザーの判断ということでしょう。
それを端的に表しているのが、同記事の中のこの部分。
>グラフィックの質が落ちても構わないからPS2で楽しみたいというユーザーが多かった
これは「グラフィックの質以外はPS2のそれと本質的に変わらない」と読み替えられる(少なくとも「ガンダム無双」については事実そう)。
結局、凄いスペックを持った新ハードが登場したにも関わらず、現状そのポテンシャルを持てあまし気味。「新ハードでなければ!」というような必要性も感動もそこにはない(この辺りは、1年以上前にも当サイトで言及した部分ではありますが)。
で、この問題について、早々に一つの回答を見せたのが任天堂で、それがDSやWii。今までと同じのがダメなら、新機軸の遊びを提供しようというね。
しかしDSやWiiだけでユーザーが全員満足するかというとそうでもない。普通のコントロールパッドで、絵が綺麗なゲームをやりたい!という層も確実にいて、そう言う人にはDSやWiiはそこまで魅力的には映らない。今までと同一線上のハードだって必要です。
でも、既存のゲームと同じ手法でゲームを開発していたのでは、ユーザーはもう振り向いてくれない。新しい発想による、「次世代機にしか体現できない」ゲームが必要です。
それはなんだと問われると回答に窮するのですが、ある一つの事例としては、Xbox360でリリースされた「Forza Motorsport 2」や「アイドルマスター」は、興味深いのではないでしょうか。
この2本は、どちらもPS2ではその本質的なおもしろさを体現できない。フォルツァ2の演算(1イントの描画と、秒間360回の物理演算)をPS2で再現できるわけがないし、アイマスの動作が2イントになったら興醒めも良いところです(※)。
もちろん似たようなものはPS2でも再現できるのですが、どちらも作品が本当に体現したいことを削ぎ落とさなければ無理でしょう。この2本は、確実にXbox360レベルのスペックを要求する。
次世代機の能力が必要であるという、その1つのモデルがこの2本です。
とはいえ、「フォルツァ2」や「アイマス」が、次世代ゲームすべての手本だと言うつもりはありません。むしろ、単純にこの方向性だけ追求していたのでは、袋小路に突き当たるとさえ思う。
しかし、これらの作品が体現した「世界」は、今後のゲーム界を支える示唆に富んでいると強く感じます。
もっと言えば、ゲームという存在が、ある「世界」を描く――すなわち、芸術の分野に立ち入っていく時代になったのかもしれないと思うのです(さすがに言い過ぎか?)。
もちろん、そういった革新性を持ったソフトのアイディアはなかなか出てこないだろうし、また、ハイスペックを要求するソフトの開発にはその分コストがかかります。
でも、だからと言って、粗末なゲームばかり作るわけにはいかない。時代のニーズに合致した物を作らなければ、ユーザーは微笑んでくれない。嫌でも核心さは求められるし、嫌でもコストの高騰は避けられない。ソフトメーカーにとっては、この辺りの折り合いをどう付けるかが死活問題でしょう、
となると、今後のハードメーカーの生き残りというのは、たぶん、開発環境と実開発の低コスト化にかかっているのではないでしょうか。ハードを使いこなす敷居が高ければ高いほど、「ハードを使いこなすためのインフラ」は簡便でなければいけない。それをおろそかにした時、ハードメーカーは敗北する。
まぁ、そんなことはもうずいぶん前から言われていた話ではあるんですけどね。いよいよそれが「ごまかし」のきかない地点まで来たと言うことでしょう。
今回の事件――PS3からPS2への逆移植――は、その事実が局所的に噴出した物。そう言うことだったのかなぁ……。
※:1イント=秒間60フレームの描画、2イント=秒間30フレームの描画)
2008年1月12日
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