強さを支えるもの

 にわかサッカーファンを大量に生み出しているサッカーW杯も10日が過ぎましたが、日本代表の一次リーグ突破は極めて難しくなっている状況らしく、ニュースの調子も「勝たなければならない!」ではなく、「せめて1勝」という色に置き換わってしまっています。
 普段観ていないので、日本がどのような実力であるかというのはよくわかっていないのですが、様々な記事を拾い読みする限り、勝てない、勝ち切れない原因は「自分たちのサッカー」というものができていない、というところに尽きるようです。
 自分たちのサッカー、というのが何なのか私にはわかりません。知識がないからです。ただ、プレースタイルを一貫できていないことは諸々の記事からわかりますし、そうであるなら、選手か、あるいは監督をはじめとするスタッフか、その両方かに、自分の力、強さに対する自信がないのであろう、ということには察しが付きます。
 W杯は準備期間が長く、地区予選を含めて4年間を費やすようですが、その間に各代表チームは練習を積み、試合を重ね、自分たちの力量に合ったプレースタイルを確立し、それぞれの目標に向かって研鑽と経験を積む。
 本戦であるW杯はその積み上げた成果を示す場であり、すべての準備はここまでに終えておかなければならない。逆に言えば、ここまでに準備できなかったことは、示したくても示せないということ。プレースタイルが一貫できないということは、その「準備できなかったこと」をやろうとしていることに他ならず、それでは確かに勝てないだろうと思います。
 もちろん、様々な事情はあるのでしょう。準備できていたことが思うように実行できない、通用すると思っていた実力が跳ね返される、広いと思っていた道は予想外に狭く、見通せると思っていた景色は遮られて先も見えない。そうならいっそ、今までのことを捨ててもいいじゃないか、と。
 しかし、やはりそれは無理な願いなのでしょう。実力以上のことができないように、実力外のことだって人間にはできない。自分たちにできるのは準備していたことだけであり、それ以外のいかなるものをどれだけ渇望しても、ないものは決してそこには現れない。
 茨の道であっても、先の見えない暗闇であっても、たとえ一歩先は谷底であったとしても、やってきたことを信じて地道に一歩ずつ進むしかない。
 残酷ともいえるこの泥臭さは、常にスポーツにつきまといます。でも、もしも奇跡というものがあるのなら、この泥臭さの先にこそ待っている。
 象徴的なのは――ブログ主の趣味がそこなのでどうしてもモータースポーツの話になりますが――先に行われたF1カナダGPです。
 カナダGPの舞台であるジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは、長いストレートをヘアピンとシケインで繋いだ超高速サーキットであり、優勝候補として挙げられていたのは、前戦まで6連勝を続けていたメルセデスF1チーム。その予想通り、スタート直後から圧倒的な力量差を見せつけ、グングン他チームを引き離していく姿を前に、ファンは「今回もまたメルセデスか」と溜息をついたものです。
 しかし、絶望的なまでのマージンを築き始めていたメルセデスの2台が突如失速。ブレーキと回生システムにトラブルが発生するという、今季F1では最も致命的なエラーがメルセデスを襲います。ここでにわかに優勝を狙い始めたのが、中堅チームの筆頭フォース・インディアと、今季躍進を見せているウィリアムズF1チーム。若手のセルジオ・ペレスと、ベテランのフェリペ・マッサの二人が中盤からグングンとメルセデスに迫り、ついにメルセデスの牙城を崩すのかと思われました。しかし、ここでまたも波乱。もともとストレートは速いがコーナーは遅いという特性を持っていたフォース・インディアのマシンですが、終盤に至ってブレーキのトラブルが発覚します。マッサはマッサで、タイヤマネージメントに難を抱えていた結果、やむなくピットストップを行ってポジションダウン。そして、事ここに至るまで我慢に我慢を重ねてペレスの後ろに張り付いていた、レッドブル・レーシングのダニエル・リチャルドが、先行車の僅かなミスを逃さずオーバーテイク。勢いそのままに、序盤からトラブルを抱えていたメルセデスのニコ・ロズベルグに追い付き、さらにはオーバーテイク。トップを奪ったあとはチェッカーまで一直線、ついにメルセデスの連勝を6でストップさせました。
 また、リチャルドの同僚セバスチャン・ベッテルも、やはりペレスのミスを逃さずオーバーテイクし、久々の表彰台ゲット。こちらもガマンのレースの中、最後まで諦めなかった結果でした。
 レッドブルの2人が乗るマシンは、超高速サーキットには全く不向きなコーナリングマシン。ストレートで他車に30km/hの差を付けられるという、もはや勝負にならないと思われたマシンを駆りながら、それでも最後まで諦めずに機会を伺い続けた末の勝利。絶対に勝てないと思われた相手、絶望的な力量差。もしその前に心を折られ、戦うことをやめていたら、この結果は生まれなかった。これこそ、スポーツの醍醐味ともいうべきレース。
 W杯日本代表チームが今手本にするべきものがあるとしたら、カナダGPのレッドブルではないでしょうか。

PENTAX K-r + DA-L 18-55mm F3.5-5.6AL

 己の力を知り、決して過信することなく、されど諦めることもなく、地道に歩き続けながら勝利を目指す。その先に奇跡が待っていることを願いながら、泥臭く戦うことをやめない姿勢。
 よく精神論は前時代的なものとして否定されますが、ある部分では常に精神力は試されており、これに打ち勝つ底力がなければやはり勝ち切ることはできません。代表選手たちには、今こそ、これまで積み上げた心の強さを見せて欲しいところ。
 最後に、私の好きなある漫画から台詞を引用――

「本当の強さってのは…
たとえどんな状況にあろうと…
自分を信じ…あきらめず!!
いつもまっすぐに前を見て一歩一歩を歩いていく!!
それができるかどうかってことなんだ!!」
(漫画『"LOVe"』 鯨岡洋平 …著:石渡治)

2014年6月22日

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