非効率の極み

 先日の予告通り、煙管を吸ってみましたです。

 しまっておいた一式を取り出してベランダに。葉巻は屋上で吸いましたが、煙管はあまり煙が出ないとのことですので、屋上まで行く必要はないだろうとの判断。

 んで、煙管用の葉っぱとして唯一売られている「小粋」の箱を開け、包みをほどいて刻みタバコとご対面。
 ……思ってたのと違うな。木くずみたいな感じのを予想してましたが、さにあらず。なんか、糸クズ? 細い繊維みたいな、そんな感じのが入ってましたね。
 こいつを丸めて、煙管の雁首に詰める……と。
 ん、難しいぞ。つまんだ指からボロボロこぼれる。ホントに丸まるのか?

 なかなかうまくいかないので、仕方なしに、あまり丸まってない内から雁首に詰めてみることに。うーん……見た目は整った気がするけど……。

 まぁいいや。火を着けてみよう。こないだ買ったガスライターで、ボッ……とね。

 ……うーん、火が着いた……のか? モノが小さいから、よく分からん。聞いたとおり、煙すら上がらないし。まぁ表面焦げたみたいだから、たぶん着いたんだろう。とにかくこのまま吸って見るべし!


 ( ゚Д゚)y─┛~~ すぅ……

 ( ゚Д゚)y─┛~~

 ( ;゚Д゚)y─┛~~ ……






 ( ;゚Д゚)y─┛~~  ……………ッッッ!!!






 濃ッ………!!!


 うぉお、これが煙管の味か。キクなぁ。
 一発の重さでは、葉巻以上のモノがあるじゃないのさ。
 

 まぁ、フィルタも何もあったモンじゃないから、当たり前っちゃ当たり前なんだけど。
 葉巻の場合、葉っぱ自体がフィルタの役割を果たしているけど、煙管の場合は長い管を通る際の冷却だけでフィルタ代わりとしてるだけだからなぁ。
 しかし、とにかくまだ1口目だ。3口くらい吸えるらしいから、あと二回……
 ( ゚Д゚)y─┛~~ すぅ……
 ( ゚Д゚)。oO○ プハァ……
 ( ゚Д゚)y─┛~~ すぅ……
 ( ゚Д゚)。oO○ プハァ……
 んん……、これはまさに「一服」と言うにふさわしい……。
 ……?
 口の中に違和感が……
 って、葉っぱ吸い込んじゃった。ぺっぺっ!
 あー、かっこ悪。小粋でもなんでもないな。初心者だから仕方ないけど。
 ちなみに、この刻みタバコの「小粋」。1箱330円なのですが、一回の喫煙では量がほとんど減りません。何十回も吸えそう。先に書いたとおり一服が数口で終わってしまうとはいえ、一息が紙巻きタバコよりも濃いのと、単純に吸うのに手間がかかるせいで、「一服」すれば落ち着いてしまう。非常に経済的な気がします。
 とにかく、これで吸い終わったらしい。火が消えたのかどうかもよく分からんが。
 えっと、火が消えたら、灰を灰皿に落とさないと。やり方は、雁首を手でトントンするか、遠心力で灰を落とすか……か。
 んじゃあ、トントンしてみるか。
 ……あれ、出てこないぞ。
 ……おかしいなー。
 じゃあ遠心力で。フリフリしよう。
 ……出てこねえ。
 どうしよう。灰皿に雁首打ち付けてみるか。あんまり推奨されないらしいけど。
 ……それでも出てこないッス。
 あー、アレか。丸まってない内から葉っぱを詰めたモンだから、灰が雁首の中でバラバラになって、ニコチンでくっついたのか?
 しゃーない、針で落とすか……。
 うーん。本当に小粋とはかけはなれた一服だった。
 ちょっと悔しい。特に最後のアレが。灰がポンと出てこないと、"そういう気分"にならないじゃないか。
 よし、もいっぺんチャレンジだ。
 今度はちゃんと葉を丸めよう。指でクリクリしながら……。
 うーん……今度はうまくいった?
 火を着けて……
 ……着いてる……よね? こればっかりは本当によく分からん。こんだけ煙が出ないとは。もちろん吸い口を吸えばそこから煙は出てくるんだけど、吸った煙を吐く方向さえ間違えなければ、これ副流煙の害がほぼゼロなんだな。嫌煙派もこれなら文句を言うまい。
ともあれ、喫煙開始だ。
 
 ( ゚Д゚)y─┛~~ すぅ……
 ( ゚Д゚)。oO○ プハァ……
 ( ゚Д゚)y─┛~~ すぅ……
 ( ゚Д゚)。oO○ プハァ……
 ( ゚Д゚)y─┛~~ すぅ……
 ( ゚Д゚)。oO○ プハァ……
 ( >д<)、;'.・ ぺっぺっ
 これ2口でやめた方が良いんじゃないのか。
 さて、今度は上手く灰が落ちるかな?
 ……おおっ、ころんと落ちた。やった! これがやりたかったのよ!
 このいかにも「和風」な感じが最高だ。
 そう、なぜ煙管なんて選んだかというと、煙を吸う云々とは関係のない、こういうちょっとした「ならでは」の所作に魅力を感じたから。昔から和風のものに点が甘いんですよね。紙巻きより、葉巻より、パイプより、どうせ吸うなら日本の伝統が良かった。
 例えば、ほら、銭形平次がお静さんの横で煙管吸ってるじゃない。時代劇で見かけるああいう感じ。いいなぁ、と。
 もともと「喫煙」に示される「煙を吸う」こと自体にはそんなに価値を見いだしていない。昔、紙巻きタバコを2ヶ月も吸い続けて、結局習慣付かなかったのはそのせい。「煙なんか吸った所で、面白くはない」、それがかつてたどり着いた結論だった。タバコ一箱買うくらいなら、そのお金でビールでも買ってきた方が良かった。
 ただ、煙管やパイプだけは、少し見る目が違っていた。シャーロック・ホームズがパイプを吸っていたから、というのもひょっとしたらあるかもしませんが、それ以上に、あの無駄の固まりみたいな非効率さが心を打った。
 逆に言えば、紙巻きタバコが好きになれなかったのは、「煙を吸う」という行為について、あまりにも手軽すぎたせいだと思う。火を着けて、吸うだけ。面白くも何ともない。これだけ特化されると、その価値は「煙」以外になくなるけど、その煙自体に興味がないのだから、吸う理由がない。効率的すぎるが故に、魅力を感じられなかった。
 煙管やパイプはそれとは対極に位置している。
 煙を吸うまでの準備段階を含め、吸っている際にも注意事項が多いし、メンテナンスだってこまめにしなければいけない。喫煙する行為を「煙を吸う」という観点から見れば、煙管にしろパイプにしろ、あまりにも無駄が多すぎる。
 その上、煙管に至っては3口吸ったらもう終わり。パイプはまだ一度火を着けたら30分から1時間も吸えるらしいけど、この間、火が消えないようにずっと気を配る必要があるらしい。
 ここまでくると、もはや目的は目的としての価値を失っている。手段が目的と置き換わった典型的な例です。つまり、煙自体ではなく、煙を吸うために必要な一連の無駄な工程こそが、煙管やパイプの存在価値。
 これこそ、わざわざ煙管なんて選んだ理由に他ならない。手段のために目的すら霞んでしまうという、この効率の悪さこそが。
 無駄で非効率的なことを、わざわざ好きこのんで行う。この意味不明さが、実に人間的なのです。
 賢い人はその思考を「厨二病だ」と言うかもしれない。まったくその通りだと自分でも思う。
 しかし、意味のあることだけをしている日常よりは、意味不明なモノが混じり込んだ日常の方がいくらか刺激的です。音楽を聴くことに意味はなくても、音楽を聴くことはとても楽しいように。
 ま、難しいことはそんなに考えなくても良いのですがね。
 人の営みにいちいち理由付けをしようなんて、それこそ「小粋」とはほど遠い。うん、自分もまだまだ文化の縁には立っていないな。
 そんなことを思いながら、吸い終わった煙管を掃除している五月の日暮れ。
 煙管が習慣付くかどうかは不明ですが、まぁ、ゴールデンウィークはこんな風にゆっくりと過ごしましょう。


2010年5月1日

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