移ろう時の中に

 以前は、ビーイングは売り方がえげつないよなァ、と思っていた。シングル寄せ集めのアルバム、たいして年数も経ってないのにリリースされるベストアルバム、怒濤の如きタイアップ……。

 だが、どうもここ最近、「売り方がヘタだ」と思うことが多くなった。特にB'zの「B'z The Best "Pleasure II"」が出た時。



 前回の「B'z The Best "Pleasure"」と「B'z The Best "Treasure"」が10周年だったから、今度は20周年かな、と普通は思う。ファンならずとも。
 それが、なぜか「17年目」だ。
 なんだそれ。逆に何か意味でもあるのかと勘ぐりたくなるような中途半端さだ。
 タイトルもまた酷い。いくらなんでも「II」はないだろう。マンガの「2巻」とかじゃあるまいし、もうちょっと良い名前付けてあげればいいのに。
 しかも、収録曲が全部シングル曲じゃないか。アルバム曲が1曲も無い。前作Pleasureでさえ「Bad Communication E.Style」があったのに。
 正直、いったい誰に向けて売りたいのかよく判らないベストアルバムだった。新規顧客相手にしても既存ファン向けにしても、なんだかあらゆる意味で「いま一歩」感の漂う……。
 そして、今回の「B'z The Best "ULTRA Pleasure"」である。今日別件でタワーレコードに行ったら既に売ってたので、DVDとセットのバージョンを購入してきたのだ。
 とりあえず、こちらは20周年という事で、区切りという意味ではすこぶるよろしい。
 が、収録曲が……、なんだか残念すぎる。
 2枚組構成なのだが、まず1枚目は定番の曲がずらり。というか、初代「B'z The Best "Pleasure"」と「B'z The Best "Treasure"」に収録されている曲ばかり。あまり収録する意味が感じられない。
 そして2枚目は、こちらはここ10年のものが揃っているが、やはりシングル曲ばかりがズラリ。アルバム曲は1曲も無し。ベスト盤「Pleasure」はそういうモンだと言われればそれまでだが、なんだかなぁ。
 さっきも書いたが、誰に売りたいんだろうとつくづく思う。
 例えばファン向けだと想定してみる。その場合、この曲構成でファンが納得するかとても疑問だ。「シングルばっかりだな。全部持ってる」と思われかねない。ニューテイクが2曲入っているにせよ、かなりディープなファンでないと食指が動かないだろう。
 それに、ベスト盤と銘打つくらいなんだから、シングル曲ばかりでなく、アルバムのみに収録された名曲も並べてほしいと思う。それこそ「ベスト」と言うに相応しいではないか。少なくとも自分はそう思っているし、それに反対するファンは少数派だろう。
 では新規顧客向けだろうか? だが、それだと1枚目が既存ベストアルバム曲に収録された曲ばかりなのは解せない。これをやってしまうと、「金盤」「銀盤」と呼ばれて親しまれている、初代ベストアルバム2枚の売り上げが落ちやしないだろうか。
 なぜなら、新規顧客がベスト盤を買う動機というのは、「何から買って良いか分かんないから、とりあえずベスト盤」というものなのだから。
 ベスト盤から入って、他のアルバムやらシングルやらに手を伸ばしていくというのが黄金パターンだ。その中で、他のベストアルバムを手に取ることもあるだろうが、それが重複曲ばかりだったら、普通は買う気が失せる。ちょっとメリットがあるようには思えない。
 それに、そもそも既存曲をもういちど収録するって、なんだかこの10年のB'zの足跡を否定しているような気にならないだろうか?
 「HOME」から数えて、実に20枚のシングルと7枚のアルバム。2枚組30曲なんかにはとうてい収まらない、たくさんの素晴らしい曲がある。それでもなお、前のベストアルバムに収録した曲をわざわざ再録することの意味とは何か。
 この10年にリリースされた楽曲群は、その前の10年に比べてそんなに劣るものなのだろうか。
 自分はそうは思わない。
 「LADY NAVIGATION」や「いつかのメリークリスマス」が名曲なのは言われなくとも知っている。だが、それらは以前にリリースされたベストアルバムに収録されているのだ。わざわざ引っ張り出して「こんなのもあるよ~」と勧めなくったって、B'zの素晴らしさに触れた者なら、いつか必ずその曲たちにも出会うだろう。金盤か、銀盤か、あるいはオリジナルアルバムのどこかで。
 今回のベストアルバムは20周年の記念と言う意味の他に、この10年の総決算という意味もあったはずだ。ならば、進化し続けるバンドの足跡を明確にする意味でも、「この10年」にこだわるべきだったのではないだろうか。
 その方が、ファンにとってもB'zそのものにとっても、幸せな意味があったように思えてならない。
 一応こちらも中学時代から数えて15年以上ファンやってるので、買うには買ったが、どうにも釈然としない気分である。
 なので……、というわけではないが、何となく自分で勝手に総決算してみようと思い立ち、ここ10年の曲に絞ってベストを挙げてみた。CDと同じく、30曲を厳選。

■1枚目
1.ギリギリchop
2.ながい愛
3.信じるくらいいいだろう
4.juice
5.DEVIL
6.熱き鼓動の果て
7.Warp
8.SURFIN' 3000GTR
9.ultra soul
10.アラクレ
11.儚いダイヤモンド
12.IT'S SHOWTIME!!
13.BIG MACHINE
14.愛のバクダン
15.MONSTER

■2枚目
1.HOME
2.ONE
3.Brotherhood
4.夢のような日々
5.銀の翼で翔べ
6.今夜月の見える丘に
7.RING
8.美しき世界
9.Everlasting
10.GOLD
11.ROOTS
12.New Message
13.OCEAN
14.ゆるぎないものひとつ
15.永遠の翼

 一応、ベスト盤「Pleasure」を意識してるので、シングル曲を少し優先的に入れてはあるけれど、ちゃんとアルバム曲や2nd beatもチョイスしてある。どれもシングルとして通用するくらい、存在感のある曲だと思う。「なんでこれ入ってないの!」というのはあるかもしれないけど、少なくとも「これは落とせよ」というのは入ってないはずだ(そもそもそんな曲は存在しないと思うが……)。
 あと、1枚目と2枚目で、収録曲のカラーを変えてみた。まぁ、これはどうでも良い程度の趣向だけども。
 それにしてもどうだろう。この10年に限定しても、これだけの楽曲がきっちり揃ってくれる。各曲の売り上げはともかく、曲そのものが持つ力は、その前の10年にまったく引けを取らない。
 上のリストはせいぜい個人の趣味でチョイスした曲たちだが、プロが作りこめば、きっともっと訴求力の高いチョイスをするのだろう。
 そう思うと、やはり現在の「Pleasure」に、過去の「Pleasure」は必要なかったのではないか。時が移ろい、ゆっくりと遷移していくように――、B'zもまた、時代とともに進化しているのだから。

2008年6月17日

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